米国でレーガン大統領は相互確証破壊(MAD)に基づく、核の均衡を良しとせずに、核兵器攻撃に対する絶対的な防衛手段として、いわゆるスターウォーズ計画すなわち戦略防衛構想(SDI)を提唱し、米国のパルスパワー関連研究機関にレールガン、あるいは、自由電子レーザー等の、宇宙配備可能な超高速飛翔兵器の開発を進めた。
莫大な軍事予算を背景に、米国のパルスパワー技術は急速に発展、実用化され、その影響は日本を含めて、世界的に広まった。
日本の大手半導体メーカーもこれからはパルスパワーの需要が増えるとし、パルス大電力をスイッチング可能な、特殊半導体素子も開発された。
SDIそのものは、ゴルバチョフ政権に変わったソ連との冷戦終結に伴い、自然消滅したが、この間の技術開発の波及効果は今も貢献している。
大電力パルスを発生するための磁気スイッチは、現在は半導体リソグラフィに使用されるエキシマレーザーやEUV光源用のパルス電源に無くてはならない技術になっている。
又、自由電子レーザーは形は変わったものの、現在、理科学研究所、SPring8で建設が進められている日本の国家基幹技術X線自由電子レーザーとして、将来の産業創生の担い手となっている。
又、マイクロ波自由電子レーザーは、惑星間の電力伝送等への応用の可能性を秘めている。
あのころ、日本でも、高出力マイクロ波自由電子レーザーの開発や、レールガンの開発が進められた。これらの装置の開発の際は、私もアメリカのローレンスリバモア国立研究所、バークレー大学、スタンフォード直線加速器センター等に装置の見学に行かせてもらった。
この時製作したものが、完全固体化高繰り返し高電圧パルス電源と高速応答特性を有する誘導加速器である。前者は半導体スイッチと磁気スイッチのみを使用した800kV、8kA、80nsの大電力パルスを100Hzの繰り返しで連続発生する、日本最大の固体化パルス電源であり、後者は900keV、20nsという非常に短い時間の電子ビームを追加速する為の超高速応答の誘導加速器である。
Solid-state pulsed-power supplies to drive an induction accelerator for an X-band microwave free electron laser
Tokuchi, A.; Yoshimoto, H.; Ninomiya, N.; Ebihara, K.; Hiramatsu, S.; Kimura, Y.; Kishiro, J.; Ozaki, T.; Takayama, K.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A, Volume 331, Issue 1-3, p. 327-331.
Two pulsed-power supplies to drive an induction accelerator, which produces a 2 kA electron beam with 100 ns duration at 1.6 MeV for a high power X-band microwave free electron laser (FEL), have been developed. Each pulsed-power supply consists of a GTO-modulator and a magnetic pulse compressor (MPC). The GTO-modulator generates a 3 kVp, 110 kAp, 7 μs initial pulse at 100 pps using 10 parallel gate-turn-off thyristors (GTOs). The initial pulse is compressed to a 225 kVp, 16 kAp, 98 ns output pulse by the MPC. The flatness in the 50 ns flat top of the output voltage is 1%, and jitter of the output pulse is successfully decreased to 1 ns.
高速応答特性をもつ誘導型直線加速器
物理学会秋の分科会講演予稿集 1986(4), 225 ,19860912