高電圧のパルスを発生するのに、パルストランスは重宝なデバイスである。
もっとも効率よく、負荷にパルス電圧を供給するには、一般的には電源側のインピーダンスと負荷のインピーダンスを合わせる必要がある。負荷のインピーダンスは、負荷によってまちまちで、電圧が高くて電流が少ない高インピーダンスの負荷から、電圧が低くて電流が多い低インピーダンスの負荷までピンからキリまである。それに対して電源側のインピーダンスは通常とりえる範囲は数Ωから数百Ω程度と幅が狭く、負荷インピーダンスと合わせることができないことが頻繁にある。
こういうときにパルストランスを使用してインピーダンス整合を取ることができる。
トランスの巻数比の二乗に比例してインピーダンスは変化するので巻数比1:10にすればインピーダンスを100倍にすることができるし、10:1にすればインピーダンスを100分の1にできる。パルストランスを使用すれば整合が取れる負荷の範囲が一挙に10000倍以上に広げることができる。
ところが、このパルストランスが、なかなか難しい。巻線ー巻線間の浮遊容量、巻線ー鉄心間の浮遊容量、巻線間の磁束のカップリング、巻線を伝わる電磁波の伝播遅れなどなどの影響で、トランスの一次電圧、電流と二次電圧、電流の波形は似ても似つかない波形となる。特に高電圧で短パルスのパルストランスは実現が難しい。
高電圧になると、鉄心の断面積が大きくなり、さらに、耐圧を確保するために鉄心と巻線間の距離が広くなる。そうすると巻線が鉄心を一周するのに長さが2mほどになる場合もある。これが10回も巻いていようものなら、巻線長は20mにもなる。このトランスが油の中に入っていると、巻線に沿って電磁波が伝わる時間は100nsになる。
このトランスに50nsのパルスを打ち込んでもまともな波形は得られそうも無いが、巻線1本1本の構造、配置を適正に作れば、そこそこの波形が得られるようになる。
これまでに私が開発した高電圧のパルストランスには600kV、1.2kA、600nsや、1MV、2kA,1μsなどがある。
前者はKEKの明本先生と共同で開発したもので下記の論文で発表されている。
後者は、まだ、稼動前の状態であり、早く陽の目を見れるのを望む。
A 600 KV, 150 ns rise-time pulse transformer for klystron pulse modulators
Akemoto, M. Tokuchi, A.
Accelerator Lab., High Energy Accelerator Res. Organization, Ibaraki, Japan;
This paper appears in: Power Modulator Symposium, 2004 and 2004 High-Voltage Workshop. Conference Record of the Twenty-Sixth International
Publication Date: 23-26 May 2004
On page(s): 408-
ISBN: 0-7803-8586-1
INSPEC Accession Number: 8427317
Digital Object Identifier: 10.1109/MODSYM.2004.1433598
Current Version Published: 2005-05-31
Abstract
Summary form only given. A 600 kV, 150 ns rise-time pulse transformer with a 1:15 step-up ratio has been developed for klystron pulse modulators. This pulse transformer was designed to produce pulses with a peak current of 1200 A, a peak voltage of 600 kV, a rise-time of 150 ns, a flat-top width of 400 ns, and a repetition rate of 50 pps. To realize a fast rise-time, amorphous alloy toroidal cores with a high magnetic flux swing and a high permeability were used, and one-turn primary winding, a bifiler and tapered secondary winding design were adapted to reduce the leakage inductance. The transmission characteristics and pulse time-response were measured to analyze the pulse transformer performance. The data were compared with a distributed circuit model. The agreement with the model was very good. The results of high voltage tests using a dummy load are also presented.