高圧回路にダイオードを使用する場合は、ダイオードを直列に使用する事がある。又、一つの部品としてのダイオードであっても、その内部では多数のダイオード素子が直列になっている場合がある。特に、高圧の短パルス回路に使用する場合は、電流が流れた後の各ダイオード素子の逆回復時間にバラツキが大きいことが多く、逆回復時の直列阻止の電圧分担のアンバランスにより、過電圧が印加されたダイオードが故障して短絡し、その結果、電圧分担素子数が減り、他の素子もなだれ的に故障し、全滅に至る危険性が実は非常に高い。
この電圧分担を改善するために、ダイオード素子に並列にコンデンサや抵抗を接続する手法がよく使われるが、その結果、ダイオードの切れが悪くなり、高周波特性が劣化し、無効電流成分が増え、電源の効率、利用率が悪くなる。
アバランシェダイオード(なだれダイオード)はこの問題を解決してくれる。アバランシェ特性を有したダイオードはある規定レベル以上の電圧が印加されると破損する前にもれ電流が増加し、自分のダイオードの電圧上昇を抑え、他の直列素子に電圧を分担させる。結果、すべての直列素子の電圧が規定電圧以内で抑えられるので、電圧分担用の追加素子をつける必要が無い便利なダイオードだ。
ところが、この、アバランシェ特性を持った高圧ダイオードは以前は国産のものがあった(東芝など)が、需要不足からか現在では、国産の高圧アバランシェダイオードは皆無となってきた。アバランシェに限ることでは無いが、高圧の高速ダイオードは国産品の供給は減ってきており、ほとんどが輸入品に頼らざるを得ない状況だ。
最近、紹介を受けた高圧ダイオードに下記のものがある。
IXYS製高圧ダイオード UGE1112AY4
8kV、4.2Aの高圧ダイオードでアバランシェ特性を有しているので、直列接続で、高圧回路に使用できる。
又、ハーメチックシール構造となっているので、油中でも使用可能。
HV COMPONENTS社の高圧ダイオードHDB7.5と似た仕様と形状であるが、IXYS製の方がアバランシェ特性を明記している点と、開示されているデータが多い分、安心感がありそうに思う。今、開発中の製品にはIXYS製のダイオードを使用してみて、信頼性の評価を行ってみよう。