パルスパワーの応用事例(1)
瞬間的に高電圧高出力のパルスを繰り返し発生し、その電圧パルスを電子銃に印加することで、パルス状の電子線が発生される。
更に、同様の高電圧パルスをマグネトロンやクライストロンなどの電子管に印加するとパルス状の強力なマイクロ波が発生される。
このマイクロ波を電子線加速管に供給し、前述の電子線をこの加速管に通して加速すると、強力な高エネルギーパルス電子ビームになる。
加速管により加速された電子ビームを直接がん治療用の照射線源として使用する方法もあるが、電子線をタングステンなどの重金属に衝突させると、強力なX線に変換することができるので、このX線をがん細胞に照射して、がん細胞を死滅させ、がんを治療する方法が開発されている。
技術的な問題として、いかに、悪性ながん細胞にのみX線を照射し、健全な細胞には可能な限り照射させない事、できれば健全細胞への照射は0とすることだ。すなわち、患者へのリスク負担を最小化することが重要だ。
三菱重工が開発したCバンド加速管を使用した放射線治療装置MHI-TM2000は、がん患部の位置を正確に把握し、ピンポイントで放射線を照射できる最新鋭の医療装置で、健全な身体組織への放射線障害を回避できるなど、これまでの装置と比べて高精度ながん治療が短時間で容易に行えることを特徴としている。
又、アキュセラは最先端の放射線治療技術とがん集学治療の先進国である米国との広いネットワークをベースにした放射線治療の専門家集団で、がん患者にとって最新の治療を選択できる環境と、QOLの高い治療法を提供するべく設立された会社である。
これらの会社の目指す放射線治療をしっかりと支える重要な基本技術の一つがパルスパワー技術であり、パルスパワー技術の発展により、更に、患者へのリスクを軽減できる様に放射線治療技術が進化していくことを期待する。
放射線治療装置MHI-TM2000(三菱重工HPから引用)