パルスパワー応用事例(2)
長岡技術科学大学では、パルスパワーの産業応用研究がすすめられている。その中でも金属細線に瞬間的にパルス大電流を流し、一瞬で固体金属を気体状態に昇華させ、その後、雰囲気ガスにより急速に冷却、再凝固させることで、ナノサイズの超微粒子金属を生成させる方法であるパルス細線放電法(Pulsed Wire Discharge:PWD法)が注目されている。
粒径が100 nm以下の粒子を超微粒子と呼ぶ。超微粒子は体積に対する表面積が極めて広く、高い活性を帯びるようになり、バルクには見られない特異性質が現れる。特に数nmサイズの超微粒子では、量子サイズ効果が発現するなど、次世代のナノテクノロジーを担う新たな材料として期待されている。近年、超微粒子は小型化や省エネルギー化の材料として、またナノテクノロジーにおける重要な材料原料の一つとして認識されており、その作製法や応用に関する研究が盛んに行われている。
パルス細線放電法は、その原理より、他の気相合成法と比べ、生産性に優れており今後の実用化の展開が期待されている。
これまでに、PWD法により、巨大な磁気モーメントを示すα”-Fe16N2や純鉄に匹敵する磁気特性を有し、化学的にも安定なγ’-Fe4Nあるいはε-Fe2-3N等の窒化鉄の合成や、化学的に安定で機械的にも強度の高い材料であり、電気的には構造により金属的もしくは半導体的な特性を示すなど特異な物性を持っており、理学・工学から医療分野まで幅広い応用が期待されている カーボンナノチューブの合成についても成功が報告されている。
PWD法は電気エネルギーを直接、試料金属の熱エネルギーに変換するので、その変換効率が極めて高く、生成スピードも速い。比較的簡便な装置で反応を起こすことができるので、今後、広く産業界で活用されることを期待する。
PWD法の原理(長岡技術科学大学HPより引用)