数10nsという極めて短い時間の内に、数百kVの高電圧パルスを真空中に設置された対向電極間に印加すると、負極側の陰極電極から強力な電子ビームが発生される。
陰極から引き出された電子ビームは正極側のメッシュ陽極を通過して、反対側に仮想陰極(バーチャルカソード)を形成する。後続の電子ビームは仮想陰極で反射され、実陰極と仮想陰極の間を往復し、強力な電磁波を発生する。
バーチャルカソードを利用したこの大強度パルス電磁波発生装置をバーチャルカソードオシレータ(バーカトール)と呼ばれる。
海外では、アメリカ国防総省(DOD)が中心になってEMP兵器を目的にバーカトールによる大電力電磁パルスの開発が進められてきた。日本国内においては兵庫県立大学や長岡技術科学大学で同様の手法による大電力電磁パルスの研究がされてきた。
長岡技術科学大学では筆者らが開発した高繰り返しパルスパワー発生装置”ETIGO-IV”(400 kV, 13 kA, 150 ns, 1 Hz)を使用して、10%を超える高効率のバーカトールが開発されており数百MWという非常に強力な電磁パルスを発生している。
バーカトールは非常に簡単な構造で大電力のパルス電磁波を発生する方法として、今後の応用が期待される。
長岡技術科学大学の高繰り返しパルスパワー発生装置”ETIGO-IV”
長岡技術科学大学提案の新型バーカトール
長岡技術科学大学でのバーカトール粒子シミュレーション