高電圧パルスを発生する方法にマルクス発生器というものがある。
多数のコンデンサに並列に高電圧充電した後、高電圧スイッチの動作により、前述のコンデンサを直列に接続し放電することで、充電電圧に対してコンデンサの数の分だけ高い電圧を発生することが出来る。
私が製作したものの内、長岡技術科学大学に納入した大強度パルス軽イオンビーム発生装置”ETIGO-II”は、40個のコンデンサに75kVで並列充電し、これを直列に切り替えることにより、40倍の3000kVという極めて高い電圧を発生する。我が国最大の油中マルクス発生器です。
我が国最大の油中マルクス発生器”ETIGO-II”(長岡技術科学大学 納入)
近年、高電圧パルス電源も産業応用が進み、高電圧スイッチに半導体スイッチを使用した半導体マルクス回路の要求が高くなってきた。この度、半導体スイッチとして、高電圧MOS-FETを使用したマルクス基板を試作した。この基板一枚で定格2.5kV(最高4kV)のパルスを発生することが可能です。例えば、この基板を20枚使用すると、定格50kV(最高80kV)の発生が可能になります。充電は全基板並列に充電されるので、充電電圧は2.5kVです。各基板は光ファイバーで絶縁されており、光ファイバーから入力された光信号を電気信号に変換し、各基板に取り付けられたMOS-FETを動作させ、各基板を直列に接続して高電圧パルスを発生します。
MOS-FETは非常に高速の半導体スイッチなので、10ns以下の非常に速い立ち上がり時間で高電圧のパルスを発生することが出来ます。
パルスパワー技術研究所が開発した実験試作機第7号です。
試作した2枚の半導体マルクス基板
2枚のマルクス基板のそれぞれの出力電圧波形
(本データは各基板500V出力時のもの。最高4kV発生可能)
(一番上の波形はトリガ入力信号)